番外編(恋①)

【高校2年のあたしの恋~前半~】


「高校2年のあたし」でもちらっと書いたけど、あたしは高2になって恋をした。

それも、去年度卒業してしまった同じ写真部の先輩に。先輩が居なくなってから、

急に、先輩のこと好きかもしれないと思い始めた。あたしは滅多に人を好きになら

ないので、自分のこの感情がすごく嬉しかった。そして、もし先輩と付き合えた

ら・・・、と思うと、この辛い学校生活なんかどうでもよくなってしまうような気

がした。というわけで、あたしは自分の感情が消えないうちに、すぐ行動した。ま

ず、写真部の男子部員に協力してもらい、先輩に、あたしとメールしてもらう許可

を得た。次の日から、毎日毎日メールのやりとり。といっても、1日多くて3回く

らいのやりとりだったけど。でも、先輩は必ず毎日メールをくれた。「そういえ

ば、何て呼べばいい?」「何でもいいですよ。ちなみに、下の名前は智子です。」

「じゃあ、智子でいいかな?」そんな会話が、あたしのエネルギーになってた。あ

る日、先輩がどこの大学に行ってるか知らなかったので、聞いてみた。めちゃくち

ゃ意外な答えが返ってきた。てっきり名古屋の大学に行ってると思ってたあたしが

バカだった・・・。先輩は、京都の大学に行ってた。ショックを受けつつも、メー

ルを続けた。そんなある日、先輩が名古屋に帰ってくることになった。そのとき

に、デートすることになった。 あたしは、デートの日まで、大人っぽい髪型やメ

イクを研究したりした。 そして、ついにデート当日(平日)。学校が終わってから

待ち合わせ場所に行くと、先輩が居た。栄(名古屋の繁華街)に行くので、地下鉄に

乗り、ドキドキしながらもいろいろな話をした。栄に着いた。辺りはまだ明るかっ

た。喫茶店に入り、紅茶を飲む。辺りが暗くなってきた。喫茶店を出て、木が生い

茂ってる、道路を挟んだ公園のベンチに腰掛けた。テレビ塔が、ライトアップし

た。そこで、またいろいろな話をする。先輩が、聞いてきた。「僕と、どういう風

になりたいと思ってる?」以前、あたしはメールでさりげなく告白した。そのとき

は、なんか曖昧な返事をもらったんだけど。 あたしは、「恋・・・人・・と

か。」と答えた。すると先輩は、「僕は、智子のことが好き・・だし、う

ん・・・。でも、今京都に住んでるからなかなか会えないよね・・・。それで

も・・いいなら・・・。」と言う。その後、沈黙が続いた。数分経つと、先輩があ

たしの手を見て、「手・・・ちっちゃいね。白いし。爪もキレイだね。僕の手、見

てよ。黒いし、爪も丸い。」と、笑いながら言う。あたしも笑った。それから、な

んとなくお互いの手を合わせて、指の隙間をお互いの指で埋めた。先輩の肩が、あ

たしの肩に触れた。顔が少しずつ近付く。先輩の唇が、あたしの唇に触れた。キ

ス。ディープキス。初キス。それから、あたしは先輩の膝の上に座り(お姫様だっこ

みたいな)、先輩はあたしを抱き締める。抱き締め合う。ディープキス。抱き締め合

う。ディープキス・・・。そんなことを繰り返していると、雨が降ってきた。先輩

はあたしを膝の上から下ろし、「行こうか。」。え?どこに?まさか・・・。と思

いつつも、自分から先輩と手をつなぐ。先輩は足早に歩く。あたしは、子供みたい

に、ついていく。駅の階段を下りる。え?帰るの?「先輩・・・もう帰っちゃうん

ですか?」と聞くと、「ごめん、友達と飲みに行くって約束してるんだ。ごめん

ね。」という返事。ちょっとがっかり。駅のホームでも、電車の中でも、あたしは

先輩の手を握ってた。電車の中で、会話はほとんどなし。なんか先輩が冷たく感じ

た。あたしは、どうすればいいのかわかんなかった。ふと、口が開く。「先輩は、

いつ京都に帰るんですか?名古屋に居る間はもう会えませんか?」「え~っ

と・・・う~ん、あ、明日なら少し空いてるよ。よかったら、前に言ってた兄の家

来る?」。この「兄の家」とは、先輩のお兄さんが昔、倉庫代わりにしてた、小さ

なアパートの部屋のこと。 あたしは、即答で「行きます。」と言った。電車を下

りて、先輩と別れた。 別れた後、先輩はあたしのこと好きじゃないなってずっと

考えてた。だって普通、初デートでディープキスする?それに、キスが終わった

後、先輩、冷たかったように思えたから。



© Rakuten Group, Inc.